私は、幼少期を大家族で過ごしたからか、あるいは家風だったのか、人との心のつながりを感じると嬉しくなる。
あまり意地悪とかそういうものはなく、むしろ思いやりに満ちている家だった。
いや、母と祖母の間に一般的な嫁姑の感情のやり取りくらいはあっただろう。
でも、一見いろいろあるように見えて、その実仲がいい、ということはよくあることである。
おもしろいこともたくさん聞いた。
私を産んだ母が病院で眠っていて、ハッと気がついたら、父の弟の叔父が座って見つめていただとか(まさか義姉を好きだったわけではないだろうけれど。)、母が三日はしかで高熱を出して苦しんでいて、眠っていて起きてみたら、枕元に当時はまだ高級品だったマスクメロンのカットされたのが置いてあったのも、叔父の仕業だったらしい。
おじいちゃんはお乳の出ない母のためにお餅を買って来てくれようと頑張ってみたり、おばあちゃんは母を可愛がっていたりするエピソードがたくさんあり過ぎる。父の姉の伯母は母にお小遣いを挙げていたりしたらしい。
今になって聞いてみれば、結構思いやりに溢れるエピソードが多い。
母も伯母のところの、私の従姉たちにいろいろ贈り物もしていたみたいだし、お洋服を縫ってあげたり、編み物をしてあげたりしてあげたりしたし、祖母のお洋服を縫ってあげたら、祖母は喜んで着ていたらしい。
女性同士の仲がいいとか悪いとか、って、なかなか難しい。
私などがわからないやりとりがあって、小競り合いを楽しんでいたりということもある。
東野圭吾の作品である『新参者』のドラマ版の主演を演じた阿部寛が、ドラマの中で語っていたが、女性の仲というのは、表面から見ただけではわからないもの。いつも喧嘩しているお嫁さんとお姑さんが本当は仲がいいとかいうことがある、というのをドラマの中で上手に表現されていた。
今でも思う。
あまり競争などを好む家ではなかった。
おっとりとのんびりとしていた。
思いやりのある人が多かった。
だからか、私はどこか人と人が心をつながった瞬間が好きである。